気心の知れた女友達と、
SOHOにあるお気に入りのカフェで待ち合わせて。
真っ赤なバラの花びらがあしらわれた
ケーキをオーダーする。

最近旅行に行ったキューバの話。
パーティーで出会った男から食事に誘われた話。
自分が経営する会社の話。
大切な友達にはすぐに聞いてほしくて、
時間はあっという間に過ぎていく。

迷っていることや愚痴の話はしない。
自分のことは、自分にしか決められないから。
大切な人とは、ポジティブな感情を共有したいから。
 
この街でジュエリーの会社をやろうと決めたときは、
ずっとよく知っているはずのニューヨークなのに
違う街に初めて来たかのような不安を覚えた。
道を歩くのも、どこか周りばかり見て歩いていた。

けれど今は、自分の選択が正しかったと思う。
今日だって、長い髪をなびかせ、胸をはって、
まっすぐ前を見つめながらセントラル通りを歩いてきた。
道を自ら拓かなければ淘汰されるこの街で
自分を支えてくれるのは、自分がやってきたことだけ。

その赤いケーキに負けないくらい、
彼女は、ニューヨーカーを象徴するような
華やかさとエネルギーを放っている。